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T-ch No.4 「突然線が曲がって見えたら?」

皆さんはまっすぐな線はまっすぐに、曲がった線は曲がって見えると思いますが、ある日突然まっすぐだった線が、曲がって見えるようになったらどうしたらいいでしょうか。
そんなことはあり得ないだろうって?いえ、曲がって見えるようになる病気があるのです。

線を見るのに使われているのは、目です。目は外界から入ってくる光を網膜という膜に映った像として感知して、それを電気信号に換えて、脳に送っています。その信号が脳に伝わって、いろいろなものが見えるということになります。
では、なぜものが曲がって見えるようになるのでしょうか。
光が映る網膜は通常はピンと張っています。しかし何らかの理由で網膜が凸凹になってしまうと、そこに映る像も凸凹になってしまうのです。プロジェクターや映写機で写したスクリーンに大きな皺がよっていたら、曲がって見えますよね(図1)。それと同じ原理です。
特に黄斑部という網膜の中心部分が凸凹になると、強く感じます。

図1

眼科を受診すると、眼底検査を行いますが、さらにOCT(光干渉断層計)という機械を用いた検査を行います。最近では、テクノロジーの進歩により網膜の断面図をこのOCTで簡単に撮ることができます。図2aが正常の網膜です。中心窩と呼ばれる視線を合わせた時に使われる部分、細かいものを判別できる部分が、中心の窪んだ部分です。

では網膜はなぜ凸凹になってしまうのでしょう。そのような病気はいくつもありますが、代表的な、黄斑円孔、黄斑上膜、加齢黄斑変性について説明します。
まず、黄斑円孔ですが、中心部分が周りから引っ張られて、孔(あな)になってしまう病気です(図2b)。中心部分が引っ張られて、孔になるので、みたところがぎゅっと縮まって見えます。四角いものが砂時計のように中心部が小さく見えるようになります。
次に、黄斑上膜ですが、網膜の上にもう一枚膜ができてしまう病気です(図2c)。膜があるだけであればいいのですが、膜は収縮してくる性質があり、網膜を引っ張ります。それにより、網膜が凸凹になるのです。歪んでみる歪視の他に、映る部分の面積が変化するので、ものが大きく見える大視症、あるいは小さく見える小視症が生じます。
これら2つの病気は硝子体手術と呼ばれる外科的な手術で治療します。
もう一つの加齢黄斑変性は、加齢という名前がついている通り、原則は50歳以上の病気で、黄斑部に新生血管ができます。新生血管は網膜の状況を改善するために新しく作られた血管ですが、残念ながら不完全な血管で、血管から出血や滲出液が漏れ出ます。その結果網膜が腫れて、凸凹ができて見え方がおかしくなります(図2d)。線が曲がって見えたり、見たいところ(人の顔など)が見えにくくなります(図3)。

治療は、抗VEGF薬という特殊な薬を目の中、硝子体に注射をしますが、繰り返しの治療が必要です。
このように黄斑部の病気は、共通して歪みや中心部分の見えづらさが出ます。

また、歪みですが実は気付きにくいという特徴があります。なぜでしょうか。
皆さんには目が左右それぞれ2つついていると思います。2つあるので、物を立体的に把握することができ、とても便利です。
しかし目は2つあるので、片方の目ではまっすぐな線がまっすぐに見えて、もう片方の目では曲がって見えても、両方の目で同時に見ているとまっすぐに見えるということがよくあるのです。ですから、異常を早く見つめるためには片方閉じて片目だけで見て、曲がって見えていないか確認する必要があるのです。たまたま、片目が塞がって見え方の異常に気づくことがよくあります。皆さんもぜひ片目を閉じて、片目だけで見てください。その時には方眼紙や障子の桟(さん)など、縦横にまっすぐな線があるものを見ると異常に気付きやすいです。もちろん、非常に強く曲がって見るようになると、両目で見ていても違和感が生じ、曲がって見えることがあります。

もし線が曲がって見えたら、眼科に行って必ず検査をしてもらってください。治療は早期に行う必要があります。専門的な治療は大学病院などの黄斑外来でできます。もちろん当院でも治療できますので、治療が必要な方は黄斑外来へご相談ください。

眼科 主任教授 井上 裕治

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