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T-ch No.5 「わかってきたアトピー性皮膚炎」

アトピー性皮膚炎という病名を聞かれたことのある方は多いのではないかと思います。

多くは幼少児期に発症し、日本では概ね10人に1人程度がかかるとされる疾患で、皮膚科でもよく見る病気の一つです。喘息やアレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎などのアレルギーを合併しやすいことに加えて、痒みが患者さんにとって辛い症状の一つであることがわかっています。

最近、その病態がわかってきており、約5年前から外用剤、内服薬、注射薬の全てにおいて、新薬が登場し、治療が大きく変わってきています。こうした治療薬の中には皮膚の赤みなどの炎症をなおすもののみならず、皮膚の痒みに対する治療薬も含まれています。
例えば、IL-31というタンパク質を部分的にブロックする注射薬では数日で睡眠障害をきたすほどの痒みが改善することがわかっています。IL-4, IL-13といったタンパク質を阻害すると、多くの患者さんで赤み痒みが改善することもわかっています。

さて、このアレルギーという性質ですが、簡単にいうと、外界から入ってきた異物を効率よく排除する、人間に備わった免疫力です。
アレルギー性結膜炎はアレルギーを起こす物質を涙で外に押し出すために起こります。
アレルギー性鼻炎は鼻水で外にだします。
喘息は気道に入ってきた物質を咳で外にだします。
そして、アトピー性皮膚炎は、というと、痒くなって外にかき出します。
つまり、かゆみとは皮膚のアレルギーの本質ともいえる性質です(図1)。

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優れた能力もときにそれが強すぎると疾患になってしまう部分があるのです。皮膚が炎症を起こしていると、そうした外部からの異物が皮膚の中に入り込みやすくなり、体内の免疫系に学習される機会を与えてしまいます。逆に皮膚の状態をよくすれば、外部から異物が入り込む機会が減って、アレルギーの発症リスクが減ると考えられるのです。実際、皮膚の症状をコントロールすることで新たなアレルギーの発症を抑制できることもわかってきていて、皮膚の症状をできるだけ外用剤などでコントロールすることの重要性が改めて注目されてきています。

アトピー性皮膚炎でお悩みの患者さんは、治療や病気の理解が近年大きく変わってきているので、ぜひ、皮膚科に足を運んでもらいたいと思います。

皮膚科 主任教授 多田 弥生

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