病院病理部
診療内容・特色
病理診断とは
病気の適切な治療のためには、病気の正確な診断が不可欠です。病気を持つ患者さんの体から採取された臓器(例えば胃癌患者さんの胃など)や組織・細胞を、肉眼的あるいは顕微鏡で観察し、この病気が何であるか、どのくらい進行しているかなどの判定を下すこと、これを病理診断といいます。
病院病理部では、患者さんの病変から採取された組織や細胞を預かり、適切な方法で処理・加工して顕微鏡標本(プレパラート)を作製します。顕微鏡下にその細胞配列や細胞形態を観察して病理診断を行い、患者さんの主治医に報告することで、主治医は適切な治療を行うことができます。病院にこの部門があることで、より良い医療を迅速に提供できるのです。
病院病理部は、病理診断を専門とする「病理医」と顕微鏡標本を作製する「臨床検査技師」から構成され、双方の協力によってより精度の高い病理診断を目指しています。病理診断には以下のようなものがあります。
- 細胞診断
- 生検組織診断
- 術中迅速診断
- 手術で摘出された臓器・組織の診断
- 病理解剖
細胞診断:年間約12,000件
痰(たん)や尿などの体液に、肺がん、膀胱がんなどのがん細胞が混ざることがあります。この現象を利用して、痰や尿を調べることで患者さんの痛みをほとんど伴わずにがんの検査をすることができます。プレパラート上に塗りつけて(塗沫)色を付けた(染色)痰や尿を顕微鏡で調べてがん細胞がいるかどうかを判断するのが細胞診断です。子宮がん検診では、子宮頚部(しきゅうけいぶ)から細胞をこすりとって調べます。
痰の中に混じった肺がんの細胞。
子宮がん検診で、子宮頚部粘液の中にみられた前がん病変の細胞。
この時点で治療すれば、大きな手術は回避できます。
生検組織診断:年間約7,000件
内視鏡検査で見つかった胃や大腸のポリープや潰瘍(かいよう)、あるいは皮膚にできた腫瘤(しゅりゅう)などは、肉眼で見るだけではそれがどんな病気なのかわかりません。このような時、病変の一部を少し切り取って病理診断を行うことによって、その患者さんの病気の治療方針が決まります。これを生検組織診断と呼びます。
術中迅速診断:年間約500件
手術中に採取された病変組織を短時間(通常10~15分程度)で病理診断を行います。病変ががんかどうか、病変が取り切れているかどうか、リンパ節や腹膜への転移があるかどうかなどを迅速に判断し、執刀医に連絡します。その結果によって執刀医は手術方針を決定します。
手術で摘出された臓器・組織の診断:年間約1,500件
手術によって摘出された胃や大腸、乳腺などの臓器・組織は、肉眼で病変の部位、大きさ、性状、広がりを確認し、診断に必要な部分を切りとって顕微鏡標本を作製します。これを顕微鏡で観察することによって、病気がどれくらい進行しているか、手術でとりきれたのか、追加治療が必要かどうか、がんであれば「タチがいいがんか悪いがん(注)」か、リンパ節やその他臓器への転移があるかどうかなど、その後の治療方針決定に役立つ情報を提供します。
注:がんの中にはいろいろな種類があります。たとえば胃がんは十数種類、脳腫瘍や卵巣がんでは数十種類あり、顕微鏡で観察することによって分類できます。これらはそれぞれ性格が違い、小さいうちに見つけて治療してもすぐに全身に転移してしまうような悪性度の高いがんもあれば、見つかった時に大きくても適切に治療すれば大事には至らないというがんもあります。
病理解剖:年間約30件
病気で亡くなった患者さんを、ご遺族の承諾を得て解剖させていただくことを病理解剖といいます。事故や犯罪にかかわる遺体を解剖する法医解剖とは異なり、生前の診断が正しかったのか、どのくらい病気が進行していたのか、適切な治療がなされていたのか、治療の効果はどれくらいあったのか、死因は何か、といったことを判断します。