T-ch No.8 「うつ病の最新治療 rTMS ― 磁気で脳をやさしく活性化」
「気分が沈む」「何をしても楽しくない」状態が2週間以上続き、仕事や家事が手につかない状態が2週間以上続くときは、「うつ病」を疑います。うつ病は脳の司令塔である前頭葉のネットワークが弱まり、セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質が不足することで起こると考えられています。
うつ病治療の基本は以下の三本柱が中心です。
1. 薬物療法(抗うつ薬・抗不安薬)
お薬で脳内の神経伝達物質のバランスを整え、抑うつ・不安症状を緩和します。
2. 精神療法(認知行動療法など)
治療で医師やカウンセラーとの話し合いによって考え方と行動パターンを見直し、ストレス耐性を高める治療法です。
3. 生活リズムの調整
睡眠・食事・運動を整え、本来持っている自己治癒力を引き出します。
上記の治療を行いながら、症状が改善するのを待ちますが、約3人に1人は十分な改善が得られず、その場合には「治療抵抗性うつ病」と呼ばれます。
そこで近年注目されるのが反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)です。
磁気コイルを頭皮に当て、1回約40分、一定の磁気パルスで前頭葉を刺激し、神経回路を活性化する治療法です。rTMSでは麻酔も不要で、ほとんど痛みはありません。当院が導入したNeuroStarⓇは世界で200万人以上の治療実績があり、副作用は一過性の頭皮の違和感や軽い頭痛程度と報告されています。当院での治療は基本的に入院で行い、週5回×4〜6週が標準です。また、既存の薬物療法で十分な効果が得られない中等度以上のうつ病患者を対象として保険適用となっています。

患者さんへのうつ病治療のワンポイント
・「休むこと」は治療の第一歩です。 自分を責めずに「脳の休息期間」を取るようにしましょう。
・睡眠やバランスのよい食事、軽い運動は薬と同じくらい大切です。
・症状が長引く、薬が効きにくいと感じたら早めに専門医へご相談ください。
当院メンタルヘルス科では、うつ病をはじめとしたこころの病に対し個別の治療計画を立てて、必要に応じてrTMSや電気けいれん療法も行っています。こころの不調でお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
メンタルヘルス科 教授 音羽 健司