T-ch No.9 「新しい狭心症とは」
狭心症って、どんな病気?
狭心症は、心臓に酸素や血液が足りなくなることで起こる症状のことです。
よくあるのは、歩いたり階段を上ったりしたときに「胸が締めつけられる」「重たい」「息がしづらい」といった違和感が出て、少し休むと楽になるタイプです。心臓からの症状の特徴は、どこが痛いのかはっきり自分ではわからないこと、あごや腕に拡がっていくことなどです。通常は15分以内で症状がおさまります。
原因として昔から知られているのは、心臓の血管(冠動脈)が動脈硬化で細くなること。血管が細くなると、必要な血液が流れにくくなり、心臓が酸欠状態になります。
最近では、冠動脈に目立った狭窄がないのに狭心症の症状が出るタイプの患者さんがたくさんいることがわかってきました。これをINOCA(イノカ)と呼びます。
INOCAでは、次のような仕組みが関係します。
- 心臓の中のとても細い血管(微小血管)がうまく広がらない
- 冠動脈が一時的にキュッと縮んでしまう(けいれん・攣縮)
この場合、カテーテル検査で「大きな血管はきれい」と言われても、症状は本物であり、決して気のせいではありません。特に女性や高血圧・糖尿病のある方に多いことが知られています。昔は医療側もこのINOCAの認識があまりなかったため、気のせいでしょうと言ってしまっていたことが多かったのも事実です。今は専門医の間でINOCAの考え方が普及してきましたので、そのように言われることが少なくなってきたと思います。
検査と治療で大切なこと
狭心症が疑われるときは、心電図やCT、必要に応じてカテーテル検査などで、血管や血流の状態を調べます。
治療は、血管を広げる薬や心臓の負担を減らす薬、生活習慣の見直しを組み合わせます。冠動脈が狭窄しているときは、それを拡げるカテーテル治療を行ったり、バイパス手術を行ったりします。INOCAでも、薬や生活習慣の治療で症状は良くなります。
ニトログリセリンは怖い?
狭心症の発作時はニトログリセリンの舌下錠を舌の裏側に入れて舐めると症状が良くなります。もし症状がよくならない場合は狭心症以外の原因を考える必要があります。
患者さんからニトログリセリンを使うのは怖いという話をよく聞きます。ニトログリセリンは狭心症のつらい症状を早く楽にするための、100年以上前から使われているお薬です。心臓の血管を一時的に広げて、血液の流れをよくする働きがあります。
ニトログリセリンを使うと、頭がズキズキしたり、顔がほてったりすることがあります。これは薬が効いて、血管が広がっているサインでもあります。多くの場合、時間とともに自然におさまりますし、命に関わるような副作用ではありません。大昔、爆薬として使用されたことがあるために、こわいイメージがあるかもしれませんが、医薬品としてごく少量で安全に加工されています。爆発することはありません。
循環器内科 主任教授 上妻 謙

